TBCが中小企業経営者のM&A支援に込める思いとは?
事業承継のためのM&Aの現状と、経営者のみなさまへのメッセージを当社役員、代表取締役 大山 修と、専務取締役 渡部 潔にインタビューしました。
―今、中小企業の事業承継において、M&Aが注目されている理由はどこにあるのでしょうか。
代表取締役 大山 修(以下、大山)
少子高齢化社会の進行による後継者不足、急速にデジタル化する職場環境の変化など、さまざまな要素が重なり合うことで、事業承継の流れ自体も複雑化しています。特に、中小企業にとっては、これまで一般的だった、息子さんや娘さんが跡を継ぐ、社内の有望株に後を任せるといった承継方法が、簡単には成立しなくなってきています。そこで、家族でもなく、社内の人間でもない、第三者に会社を譲渡するという承継方法が有効になるのです。
―かつてはM&Aと聞くと、「敵対的買収」をはじめとするあまり穏やかではないイメージもありましたが、そういったことばかりではないと。
専務取締役 渡部 潔(以下、渡部)
もちろんです。私どもでは年間に200件あまりのM&Aのご相談を受けていますが、友好的かつ合理的な協議の結果、売却側、買取側の双方が納得できる形で成立しており、幸いなことに後でもめるようなことになった案件はございません。多くの経営者の方がM&Aによって、スムーズな事業承継を実現させておられます。
―M&Aによる承継の利点はどんなところにあるのでしょう。
大山
大きく分けて2つのメリットが考えられると思います。ひとつは、後継者がいない状況でも、企業が培ってきた技術やノウハウを途絶えさせることなく確実に次世代につないでいけること。家族や社員の中に後継者が見つからないので会社を閉じざるを得ない、それによって貴重な技術が消滅してしまうといった事態は、日本の経済にとって大きな損失です。それを防ぐことを考えるならば、M&Aは重要な選択肢になります。
渡部
もうひとつ、M&Aを念頭に置くと、ビジネスの「出口」がイメージしやすくなります。例えば、「勤めていた会社を辞めて、自分で事業を始めたい」あるいは「思いついたアイデアを形にして、ビジネスを始めたい」と思った方がいたとします。近年、起業すること自体は比較的簡単になってきていますが、長期的なヴィジョンを描くのはとても難しい。起こした事業を何十年も維持し、後継者を育て……と考えると、途端に起業のハードルが上がってしまうこともあるはずです。今の時代では、会社を大きくして末永く続けることだけがすべてではありません。そこで、「10年続けたら、M&Aで第三者に事業を売却・承継する」という出口をあらかじめ盛り込んでおく。アメリカなどではごくごく普通なこうした考え方をすれば起業後のプランが明確になりますし、今やるべきことに集中できます。
―事業の承継がしやすくなるだけではなく、起業する時点のビジョンにも好影響をもたらすということですね。
大山
はい。積み重ねたものを守る一方で、新しい挑戦を後押しする役割も担う。M&Aは、経済全体の新陳代謝を活性化する鍵になると、私どもは考えています。
―では、M&Aによる事業承継を成功させるために、
経営者が考えておくべきことは何でしょう。
大山
大前提として「承継は必ず発生する」という意識を常に持っておくことが必要です。経営者が変わるのはデリケートな事案ですので、社員や顧問税理士の先生が時期や準備内容について進言するのが難しいのは言うまでもありません。また、経営者の方ご自身も、必要に迫られるまで意識していないのがほとんどです。しかしその場合、ゼロから準備をしなくてはいけない危険性があります。企業情報、財務内容の整理をはじめ、買収候補となる企業探し、各種調査や交渉など、承継の際にやるべきことは山のようにあります。来るべき時期を意識して、少しでも準備を進めておくことが何より重要だと思います。
渡部
具体的なことを言うと、特に労務関連の問題はクリアにしておくべきです。家族経営の企業や、ごく少人数で運営する企業などでは、残業の扱いなどについて比較的曖昧に処理していることがあります。あらためて精査し、問題があれば解消しておかなくてはなりません。売却成立後に過去3年分の未払いの残業代などが発覚し、トラブルになった例もあります。特に最近は、どの企業も労務問題については慎重な態度を取っていますので、そのリスクは事前に解消しておくことを強くお勧めします。加えて、経営者の方の個人的な財務周り、株主の方々への対応なども、きちんと処理しておくことが大切です。
―M&Aを円満に成立させるための秘訣のようなものはありますか?
渡部
100%満足する結果は得られない、と理解しておくことでしょうか。M&Aは買い手があって初めて成立しますので、当然、双方の利害がぶつかり合います。例えば売り手側が売却価格とか引継ぎ条件にこだわり過ぎると決して良い結果は得られません。
お互いが折れることなく意地を張ることで、最悪、ご破算になることも十分に考えられます。妥協すべきところは割り切って着地点を探して円滑な引き継ぎを行う。事業を承継するという最重要課題を軸に、ブレない意志を持って対処することです。
大山
社員のみなさんへのきちんとしたケアも、成功のためには重要なファクターかと思います。社員のみなさんは会社に人生を委ねているわけですから、経営者が「あとはよろしく」だけでいなくなってしまうと、その後の業務に支障をきたすこともあるでしょう。将来的な不安を抱える人もいるでしょうし、会社を離れる人も出てくるかもしれない。社内はもちろん、買い手側の企業にも働きかけ、新たな経営体制にフィットするように組織を調整することも必要です。
―事業承継を考える経営者の方々にメッセージをお願いします。
大山
日本経済の現状、中小企業のあり方を見渡しても、M&Aを通じた事業承継は今後さらに一般的になり、拡大していくと思います。みなさんが培ってきた事業価値をきちんと維持し、後世に引き継いでいくためにも、積極的にご検討いただければと思います。
渡部
承継の現場では、会社の実態をしっかりと整理し、的確に伝えることが不可欠です。貴社の財務状況を漏れなく把握されている顧問税理士さんとの連携を密にして、ご満足いただける承継を成立させることが、私どもの使命だと考えています。数年先の課題と捉えているとか、実務的な細かなことでも構いませんので、ご相談いただけますと幸いです。
写真左:代表取締役 大山 修
写真右:専務取締役 渡部 潔